活動報告 2025.11.28
大規模テロ災害対応訓練参加報告
2025年11月27日横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターにて多数傷病テロ災害訓練を行いました。
以下防衛医科大学よりセンター病院から出向中の輿石医師、センター病院救急救命士山本救命士より報告です。
地下鉄化学テロ災害を想定した多数傷病者対応訓練に参加して
今回の訓練は、地下鉄で発生した化学テロ災害による多数傷病者を想定したもので、センター病院は医療チームとして参加しました。医療ディレクター(MD)本部と現場対応に分かれ、私は現場対応を担当しました
ウォームゾーンから搬送されてくる患者に対しては、トリアージに基づき赤・黄・緑の各エリアに振り分け、安定化処置を施したうえで搬送へと繋げる役割を担いました。また、防護服を着用し、偵察としてウォームゾーンに実際に入り、現場状況の把握も行いました。
ウォームゾーンに入った時点では、救出活動が始まったばかりで、患者数は10名程度でした。状況を確認し処置の可否を検討しましたが、救出完了患者が次々と増加していたため、まずは本部への情報共有を優先しました。ウォームゾーン内での医療処置は、防護服による動きづらさや救急隊の活動への干渉を避ける必要があり、限定的な状況でのみ可能だと感じました。一方で、現場の状況を直接把握することで、その後の処置を円滑に進めることができるため、活動中の隊のニーズに応じた柔軟な対応が重要だと実感しました。
患者対応では、当初は黄色エリアでの観察が中心でしたが、患者数の増加に伴い赤エリアでの対応が必要となり、黄色エリアの観察を救急隊に委ね、赤エリアへと移行しました。多数傷病者対応では、緊急性の低い患者の観察を救命隊に任せ、医療資源を赤エリアに集中させる判断が極めて重要であると再認識しました。
赤エリアでは、医師3名で対応にあたりましたが、そのうち1名が全体を俯瞰する役割を担うことで、混乱した現場でも比較的円滑に搬送まで繋げることができました。派遣医師が2名以上いる場合は、1名が本部との連携や搬送調整、物資管理を担当する体制が有効であると感じました。これは、通常診療におけるリーダーと処置担当の役割分担の延長線上にあるものです。
また、今回の訓練では搬送先の選定が想定以上にスムーズに進み、MD本部の設置によって搬送調整が円滑に行われる効果を実感しました。
災害医療における学びと今後の課題
自衛隊でも多数傷病者を想定した訓練は行われていますが、化学テロという特殊な状況を想定した訓練は稀であり、非常に貴重な経験となりました。
私自身、実際の多数傷病者対応は訓練レベルの経験しかなく、自身の練度の低さを痛感しました。今後はこうした訓練を積み重ね、対応力を高めていくことが重要だと感じています。
実際の災害では、原因物質が不明であったり、物資が不足していたり、手技に時間がかかったり、想定を超える患者数に直面する可能性があります。そうした状況にどう対応するかを、訓練を通じて常に考え続ける必要があります。
幸いにも、近年の横浜では多数傷病者や化学テロなどの大規模災害は発生していません。
CBRNE災害に関する知識はもちろんのこと、現場ではコミュニケーションや各部隊との連携がいかに重要かを改めて認識しました。
今回は、現状指揮本部・救急指揮本部・除染指揮本部・MD本部の4つに分かれて役割分担を行いましたが、災害のフェーズに応じて医療チームの本部を柔軟に移動させることが、情報収集や指揮命令の的確な遂行に繋がることを実感しました。
その結果、赤エリアでの安定化処置から搬送先医療機関の決定、患者搬送までをスムーズに行うことができました。
災害は二度と同じ形では起こりません。もしセンター病院近隣で発生した場合、院内ではどのような受け入れ体制を取るべきか。救命玄関口での対応、乾的除染、トリアージなど、今後も災害医療・CBRNE対応において、高度救命救急センター/災害拠点病院の職員として、いついかなる時でも対応できるよう日々の研鑽を重ねてまいります。
このようにいつ起こるかもしれない災害に関して常々意識をしながら定期的に訓練を行なっています。
ご興味のある方はいつでもご連絡ください。