国際学会/国際研修参加

ATS2018発表(2018.5.23)

横浜市立大学附属市民総合医療センター:小川医師

この度2018年5月18〜23日サンディエゴで開催されましたATS2018(米国胸部学会)の報告をさせていただきます。
この学会は世界中の呼吸器関連のMD,PhD,Nsなど多職種の参加者の学会です。参
加人数が20000人弱と多いため学会会場が巨大であり、San Diego convention centerだけでなく、 隣のMarriott,Grand Hyatt, Hilton hotelも使用し、朝7時のsunrise lectureから始まり、夕方4時15分までびっしりと講演・Discussionがあります。

 

分野は全ての呼吸器関連疾患で小児から成人、palliative careまで、良性疾患・悪性疾患・超急性期疾患(ARDS・Sepsisなど)・肺高血圧・希少疾患などなどいろんな分野の参加者がいます。同時に30会場を超える会場で15〜20演題のoral poster discussion、各10〜20演題くらいの講演がなされます。
Poster presentationが毎日800-1200演題。各分野で提示され、その間演者は自身のポスターの前で立って説明を行うようなスタイルです。
 

自分自身2012年の大学院時代からほぼ毎年参加しており、自分の研究成果を知ってもらうとても良い機会であるのと同時に、締め切りまでのどこまでしないといけないかという目標設定ができるので、abstratcsubmittionとacceptが非常に自分にとってのmotivationを保ってくれるような学会と位置付けています。
SanDiegoは自分にとって2回目のATSの場所ですが、ATS2014でJo Rae Wright Awardを大学院時代の研究で頂き、講演させていただいたという本当に思い入れが深いところでした。
今回の発表演題は、「Src Activation is Critical for KRAS-dependent Regulation of Human Airway Basal Cell Differentiation into Secretory and Ciliated Cells」という以前の所属先でありますWeill Cornell Medical College, Dept. of Genetic Medicineでの仕事の一つです。

肺腺癌の遺伝子異常として知られている喫煙関連がん関連遺伝子KRASの正常気道上皮基底細胞の対する作用機序ー分泌細胞・線毛細胞の分化の亢進(ATS2017)に対して最も関連しているsignal pathwayを同定し(Src)、そのSrcが実際にKRAS activationとどのように関連しているのかという結果の証明をしたという仕事です。
この発表に関してaudienceからは気道上皮基底細胞の使用に関する興味と仮説に矛盾しない研究結果、in vivoとin vitroでの矛盾しない結果に関して興味を持ってもらい、説明をすることができました。

自分のテーマとして、喫煙関連演題(e-cig, vipor, smoking cessation, water pipe)やARDS/ALI、Sepsis関連のsessionを中心に今回は参加し、多くの演者と有意義なdiscussionができました。今後の臨床研究および基礎研究に繋げられるようなネタもいろいろと拾ってくることができ、今後実践していきたいと思います。

この学会は本当に興味深い学会ですので、滞在期間中毎日朝から夕方までずっと会場で過ごす日々でしたが本当に非常に実り多い学会でありました。学会参加中に前ボス主催恒例のwine partyでラボの歴代の方々(世界中にcrystal labからのprofessorがいます)が集い、同僚達と会合があったり、新しい出会いがたくさんあったりした中で、今後の留学生・見学者の受け入れ等のコネクションの維持についても話をしてくることができました。


自身の目標としては来年のATS2019(Dallas)にも今度は当教室のデータ・研究で参加できればと考えております。

Euro ELSO 2018(2018.5. 29)

横須賀共済病院:谷口医師

このたびEuro ELSO2018に参加してきましたので報告いたします。
EuroELSOはヨーロッパにおけるECMOの学会であり、ECMOの学会としては最大規模で、ヨーロッパだけでなく、米国、アジアなどから沢山の参加があります。今回はチェコ・プラハで5/23-26まで開催され、全日程を参加させていただきました。
日本からは竹内教授をはじめ、6月からECMO研修でお世話になる日本医科大学の市場先生、多摩総合医療センターの清水先生などがinvited facultyとして参加され、Educational corner にて世界を相手にしている先生方の姿が眩しかったです。
今回のEuro ELSOでは、主催のチェコ・カルレ大学がECPRやVAーECMOを得意としており、その関連のセッションやシミュレーションが多かったです。内容としては、ECPRの適応や、LV unloadingなど日本でも問題になっていることがトピックでした。VV-ECMOについては、ECMO患者の搬送、肺移植までのブリッジなどについて、カロリンスカ大学や米軍ECMOチームから豊富な症例数をもとに報告がありました。ただ国ごとに事情が異なるためコンセンサスは得られていないのが実情でした。
様々なセッションを聞き、ECMOに関しては病院前体制、院内体制、コストなど医療経済、そして一つのゴールとなる移植医療体制を整えなければ良い結果につながらないということを強く感じました。今回発表されていた施設はどこもECMOセンターを掲げていましたが、人口370万人をカバーし、行政と密接な繋がりを持っている施設はそうそうになく、今後に横浜市大がECMOセンターを目指すことの意義を強く感じ、胸が高鳴る思いでした。
またECMO患者のモニタリングに関するセッションがあり、自分が日頃から関わっている肺エコーならびにrSO2が取り上げられておりました。肺エコーは紹介レベルの内容でしたが、rSO2については、ECMO患者の脳酸素代謝の指標、下肢虚血モニタリングとして世界のECMOセンターではかなり有用視しているようでした。rSO2についてチェコで自分と似たような研究をされている先生に質問させていただき、両者の研究にとって有意義な話ができました。また自分が興味を持っている分野とECMOが繋がっていることを感じることができ、自分の進むべき道はこれなんだと確信し、ここでも胸が熱くなりました。
国際学会の参加はまだ2回目ですが、こんなにも学び感じるものが多いとは思いませんでした。ぜひ後輩の先生達にも興味のある分野の国際学会に参加し、横浜市大という環境の良さを実感しつつ、自分の進むべき道を見つけてもらえたらと思います。みんなが国際的に前に進めば、それは教室自体が前に進むことになると思います。
未来の横浜市大ECMOセンターのために、来年のEuroELSO(スペイン・バルセロナ)には、 ECMO研修での成果を演題として出し、一歩でも前に進みたいと思います。

EVTM2018(2018.6.20)

横浜市大附属市民総合医療センター:中嶋医師

この度6月7日から9日までスウェーデンで開催された第2回EndoVascular rescuscitation and Trauma Management (EVTM) round table symposiumへの参加しました。
EVTMは、外傷蘇生のマネージメントにつき外傷医、血管外科医、IVR医、集中治療医、救急医など様々なバックグラウンドを持つ医師が集まり議論することを目的とした学会です。発表演題のほとんどがREBOA/IABOに関連するもの(各国での使用の実情、血管へのアクセス、合併症、prehospitalでの使用、トレーニングなど)でした。
各施設でのREBOAの使用については新しい知見は少なく、既存の論文の紹介にとどまるものが多かったですが、日本発の論文が度々引用されておりました。
日々の臨床でやっていること、疑問に思っていることが各国でも同じように行われていたり議論されていることに安心するとともに、この分野での日本の存在感はまだまだ大きいと感じました。
内因性CPAに対するREBOAの使用についての報告や基礎研究の報告も散見され、REBOAの今後の可能性については世界各国がしのぎを削っているようです。『今はREBOAのバブル期』との声もあり、それだけ世界的に注目度の高い分野でもあると実感しました。

France, Paris AP-HP研修(2018.9.12)

横浜市大附属市民総合医療センター:高橋耕平医師

横浜市立大学は平成27年1月にパリ公立病院連合(AP-HP)、横浜市との3者で締結した臨床・研究・教育の協力関係の構築を目的とした覚書(MOU)に基づき、救急医療をはじめとした医療分野の連携や交流を進めてきました。
平成28年度はMOU運営委員会が設置され、教職員・学生の派遣および視察の受入が実施されてきました。当教室は平成28年より毎年、教室員をパリに派遣し、現地の救急医療との交流を深めてきました。今年(平成30年)は当教室から私、高橋耕平がAP-HPでの研修の任を受けましたので、ここに報告させて頂きます。
今回は、このパリSAMU本部のあるNecker HospitalでMICUの出動に同乗したり、European Hospital Georges Pompidouの救急部門の視察など5日間の研修を行いました。
フランスの救急医療は、その病院前診療に大きな特色があります。SAMU(Services d'Aide Medicale Urgente)と呼ばれる緊急通報受信とその後の調整を行う組織と、その調整に基づき現場派遣されるMICU(Mobile ICU)と呼ばれる緊急車両がその骨格となります。
特筆すべき特色は、その過程(一般市民からの救急通報の対応、現場診療、病院への搬送など)すべておいて、医師が直接関与する点です。研修して実感したことは、医師が病院前診療に直接関与するメリットは早期治療を開始できることだけではなく、現場診療の診断に基づき適切な患者を適切な病院に適切な搬送手段で運ぶことができるという点です。
実際に経験した症例では胸痛を主訴とする症例に対して、現場出動した医師の診察で急性大動脈解離を強く疑い、心臓血管外科のある病院を選定し、ERを経由することなくICUへ直接搬送をしていました。より良い病院前診療体制とは何かを考えるヒントを得ることができ、非常に有意義な研修であったと思います。
最後にこのような貴重な機会を与えてくださったMOU運営委員会をはじめとした横浜市立大学関係者の皆様、また非常に示唆に富んだ講義をして頂いたCarli先生、Vivien先生、Veber先生、Juvin先生、それに快く研修を受け入れてくれたSAMUおよびPompidou病院の職員の方々に感謝申し上げます。

カロリンスカ大学でのECMO研修(2018.10.9)

横浜市大附属市民総合医療センター:酒井琢磨医師

カロリンスカ研究所はスウェーデン・ストックホルムの北にあり、ECMOセンターとして世界的に有名な機関です。また、最近日本人がノーベル生理学・医学賞を受賞しましたがその選考委員会があるのもカロリンスカにあります。
Euro ELSO ECMO Courseはカロリンスカ研究所で毎年開催されているコースで、今年は10月1日から10月4日まで開催されました。ドイツ、オランダ、アメリカ、イギリス、ポルトガル、ポーランド、中国など世界各国より計24人の参加者があり、うち日本人は7人でした。
コース内容は24人を4グループに分け、レクチャー、症例検討、シミュレーション、回路トラブルシューティングを1日かけて順番に学んでいくというスタイルでした。毎日8時から17時まで行われ、初日終了後はカロリンスカ大学病院のECMOセンターの見学も行うことができました。
 ECMOセンターのECMOphysician、specialistなどがカロリンスカで実際に行なっていることを元に直接講義を担当しておりました。普段我々がやっている臨床と同様の管理のこともあるし、全く違うものや、本当にそんなことをやっているのかと疑いたくなるようなものまであり、とても多くの知識や刺激を受けることができました。
 
ECMO導入基準に関してはELSOガイドラインに準じており横浜市大との大きな違いはありませんでした。カニュレーションはECMO surgeonがいればsemi cutdownで行い、いなければ経皮的穿刺をエコーで行なっていました。カニュレーションサイトは大きく異なりました。VAでは大腿送脱血、VVでは大腿脱血、内頸送血が多いかと思いますが、カロリンスカではVA VVともに内頸脱血、大腿送血とのことです。
理由は、VAの場合は内頸脱血ではより酸素化されていない上半身の血液を多く回路に流すことによりmixising pointより心臓側の酸素化を改善すること、VVの場合はリサーキュレーションを減らすことができると述べていました。管理に関してはAPTTを指標とすることは同じでしたが、血液ガスは通常我々がとっているAlineからはとらず(体の酸素化はSATを見ればよいとのこと)、人工肺前の血液ガスを1-2時間ごとに採取していました。
これによりリサーキュレーションの割合を推測でき悪化した場合はカテーテル先端の位置異常などを疑うきっかけとなるとのことでした。
また、圧測定に関してはルーチンで3箇所(ポンプ前、人工肺前、人工肺後)を常にモニターしていました。
トラブルに備え、ECMO患者の前には常に新しい人工肺、ポンプを置いておきいつでも交換ができる体制をとっていました(40秒での交換が目標だそうです)。weaningに関しても異なる点がありました。VVでは最終的にO2フローをクランプし評価を行うという点は同様でしたが、その前にCO2の除去能力評価のため人工肺にCO2を加え、自己肺のみで換気ができるかの評価を行なっていました。VAではblood flowを1L/minまで落として心エコーで評価をしますが、その際にO2フローをクランプします。1L/minのフローがシャントとなりますが、それで堪えるようなら離脱は大丈夫であろうとの説明でした。この方法に関しては他の参加者からも疑問が上がっていました。カニュレーション抜去は動脈の場合は縫合しているとのことでした。
 
カロリンスカの臨床の印象としては、世界の最先端のエビデンスを集めそれをもとに多くの症例を実践しているというわけではなく、世界のスタンダードはあるかもしれないが、カロリンスカではこのように行なっている。そしてその根拠はカロリンスカで蓄積してきたデータが示している。というように感じました。症例としてはVV-ECMOが多いようで、あまりECPRについては触れられませんでした。
 
とても多くのことを学ぶことができ、大変有意義な研修でした。今後横浜市大としてデータを集積し、独自の戦略を構築し、臨床にぜひ生かしていきたいと思います。

France, Paris, AP-HP研修(2019.11.1)

横浜市大附属病院:小川医師

この度9月9日〜本日13日までAPHP(Assistance Publique Hôpitaux de Paris)で研修させていただきましたのでご報告させいただきます。この研修に関しては毎年当大学より参加させていただいており、この度とてもよい機会をいただき参加させていただきました。

今回の研修の目的は、①Parisにおける救急医療体制(Doctor car EMS system; SAMU)②ParisのER, intensive care、trauma emergency, post operative care、Pediatric emergency上記を学ぶことです。

これまで同教室員の先生方、救急病棟Nsが歴代で参加されており、恐らく先人の方々に追記することはほとんどないかと思いますが、基本的にはParisのDoctor car systemと日本やアメリカで採用されているParamedic systemの違いは何かというものをSAMUを通じて学ぶことができました。
非常に学びが多すぎて、かなり端折っている部分も多いですが、Volumeとしては非常にHeavyです。なので読み飛ばしていただいて結構です。
 
Parisは直径10km、円周33kmに囲まれた20区からなるフランスの首都であり、病院の配置等に関しては横浜市とほぼ変わらないというのが印象でありました。各病院間は約10分以内のところに配置されており、救急車が搬送のメインであり、ドクターヘリを必要としない市でありました。施設内でヘリポートを有しているのは2施設のみ。基本的にはドクターヘリは使用しません。郊外からの搬送・郊外への搬送時にのみ使用いたします。

 
-SAMUに関して-

Professor Benoît VivienSAMU(Services d'Aide Médicale Urgente): 横浜市でいうと指令センター&#7119の役割を担っており、一日2000-2500件の救急に関する連絡を受ける場所。
Paris市内の南方Montparnasse Station近傍にあるNecker Hospital敷地内にSAMUにはEmergency Physician 3名、General Practitioner 2名、regulation assistant 6名で構成されているregulation roomを施設内に持ち、24時間3交代制で救急の連絡を受けるという体制を取っていました。救急連絡が入ると(#15;日本の119)、Regultion assistantが医療相談を受け、プロトコールに沿って救急車の必要性、SAMU(Mobile ICU)の必要性を判断します。
実際にSAMU出動を決定するのはEmergeny Physicianでありますが、その選定の基準は電話において、胸痛はSAMU必須、その他会話中の息遣いや声の変化などある程度「医師の勘」でMICUを出動させるか否かの判断をするということをPhysicianは担っておりました。必要と判断されない場合、日本同様所轄消防から消防救急に出動要請がかかり、現地に行き、病院に運ぶというParamedic systemを採用していました。日本同様8-9割は救急の指令だそうです(消火活動は1-2割くらい)。SAMUが出動してもPA連携同様消防士とともに診療に当たります。
SAMUの構成は、ER physician 1名、Anesthesia Ns 1名、Caregiver 1名の合計3名のグループが、4チーム構成されて順番に出動しています。シフトに関してはかなりstrictであり、どこの病院においてもParisの医師は週44時間以上の労働を国家的に決められています。これを破り、診療を続けて医療訴訟を起こすものなら刑務所に入れられ禁固刑になるそうです。なので夜勤や自身の勤務体制に関しては非常に重要なpointとなります。

 

SAMUに所属する医師は30名、regulation assistantは40-45名です。その人数でシフト制で回しております。General Physician、Regulation assistantに関しては救急に関する相談を受けてアドバイスを行い、横浜市での#7119と同様の役割を行なっています。実際、SAMU1隊の出動は勤務時間内に3回くらい。幸か不幸か自分の出番は2件、サイレンを鳴らしてParis市内を爆走し、現場に行きましたが、積極的なSAMUの活動が必要ない症例であり(出動したPhysicianもなぜ出動になったの?と言っていました)、患者搬送もありませんでしたが、別の隊でCPA症例があったようでSAMUのECMO専用Mobileも出動し、患者を搬送していたようです。
SAMUの利点は、いち早く現場に到着し、安定化させ、病院に運ぶ。基本ER(初療)は介さず、直接intensive care unitに運び治療が継続されるところでしょう。

-ER/GICU/Trauma center/ORに関して-Hôpital européen Georges-
Pompidouはセーヌ川沿いに位置する約800床の病院
ER, Trauma center, oncology, 心血管外科が非常に有名な病院であり心移植・肺移植の中心となってる病院でもある。ERはwalk-in, ambulanceともに受け入れており、1日平均70-100人くらいが来院。このERのBossはProf. Juvinで議員さんでもある(https://en.wikipedia.org/wiki/Philippe_Juvin)
患者が来院すると、まず前室で10分以内にNsが症状・バイタルサイン等を取り、Protocolに従いトリアージ、Blue, Yellow, Redに振り分け、BlueはBlue Unit(walk-inで問題ないところ)、Yellow/Redは病室に移動となる。
ERの構成は、Triage room, Blue unit, Yellow/Red Unit, Door Unit(15床)に分かれており、Nsがそれぞれ2-2-3-2で配置されており、このNsに加えて介護士(caregiver)が補助に入る。Drも各勤務帯で責任者制。Nsはルート確保・採血・BGA・ECG全てやる。(医師がこれらのことをすることはよほどのことがない限りないらしい)ER physicianは基本的に患者を診て、検査オーダーして、専門家にコンサルトするという流れであり、完全に初期処置を行い、各科に振り分ける。もちろん外来で帰せるものは帰す。しかし、日本のように救急科が全て診断・治療を行うわけではない。
救急外来の奥に存在するDoor Unitは、temporaryな病棟で最大で2日間の滞在、目標としては1日で転機を決定する。ここにはNs2名が常駐、各主科医師がここの患者を診る。入院は一日35人くらいで夜間15人くらい入院するが、ベッドがほぼ満床であることが多く、病棟を探すのが大変であり、朝からの責任者の仕事はベッドコントロール。当直帯はスタッフ2名、レジデント2名、深夜0時までの勤務が1名の4.5人で構成されている。
常に医学生(intern;医学部3年生から午前中は毎日出勤しており患者の診療にあたる。5人の患者を受け持つ。午後は授業。)がおり、スタッフについて病歴等々から診療の流れ、確定診断の過程をディスカッションをしている。当教室が初療室で行なっているようなスピード感はなく、救急患者の外来での待ち時間は長い印象、さらにはERでの滞在時間が長い。
Traumaに関しては基本ERに来ない。Trauma centerに直行。SAMUで搬送された患者はそのままICUに直行。Post operation room-術後の回復室の位置づけで痛みや冷め具合によって滞在時間が異なる。
全部で16床。麻酔科医が管理を行う。ICUは25床 Unit 1-4となっており、基本はGICUの位置付け。この病院は心移植・肺移植の拠点病院であり、Unit 3-4の前部屋がある病室で管理する。これは感染に配慮したもの。医師は、スタッフが3名、レジデントが10名の13人制。2交代制をしいている。勤務時間は44時間/週。ICU Nsは重症患者2名を1人が担当する。ECMOは12台あり、7台くらい同時に稼働していたこともあり。心血管系が発展していることもあり、使用頻度は高い。ECMOはintesivistが責任を持って管理する。導入はcardiovascular surgeon,Cardiologist, Intensivistが行う。

-Trauma Center-
患者が幸か不幸か来院なく、詳細は全く不明。
 
-operation room-
この病院には3箇所あり、今回訪問したのは、整形・形成・婦人科の手術室。スケジュール管理はステーションで確認することができる。1730からは4人、1930からは2人のNs体制になってしまう。ここでも勤務時間の管理が非常に厳密である。手術麻酔は麻酔Nsがanesthesia管理下に薬剤投与・挿管・術中管理・抜管を行う。日本では主科医師が手術開始前から手術室を出るまで麻酔科医を一緒に管理していることが多いと思うが、ここではあっという間にいなくなり、術後管理も基本的にはしない。
-Pediatrics ER-
Parisには3箇所小児科救急病院がある。(Hôpital Armand-Trousseau Ap-Hphttp://trousseau.aphp.fr)
年間15000件くらいのPediatric ERの来院があり、一日平均200件くらいの来院があり。冬場には250-300件の小児を受け入れる。この病院には小児科のほか産科がある。(Necker Hospitalに関しては年間75000件くらい小児救急を診ているらしい。)
小児ベッド数は120-130床くらいで冬場にはベッドを探すのが大変である。ER小児科医はスタッフ15人、レジデント10人+インターンが数名おり、外来リーダーが毎日交代でコンサルテーションやベッドコントロールを行っている。勤務に関してはやはりとても厳密で、Max44時間まで。2交代制。ERに続く24時間ベッド(Door Unit)は12床Max Pediatric ERもAdult ERと同様な体制をしいており、Nsがプロトコールに従ってトリアージし、physicianに渡す。
実際、このトリアージに関しては6ヶ月のER見学とその後2日間の実践トレーニングで行う。このトリアージプロトコールが非常にしっかりとしており、症状別に分かれたものがトリアージ室(3カ所)に置かれている。ER Phycsicianは診断・治療に関して、全て病院としてのProtocolがあり、治療方針も1年に一度bookletを改定して仕様している。初療と簡単な処置を行う。採血もしなければ点滴も入れない。もし挿管が必要な患児がいる場合、SAMUがすでに挿管済みでERを通らずICUに行くか、ERでそう判断された場合には、小児ICUからintensivistが降りてくる。実際ER physicianの挿管は2年で1回しかないと。小児診療室には患者の不安や痛みを取るという目的のため、iPadを使用した診療を行っている。ICUはNICU12床、PICU8床、超低出生体重児4床でICU intensivistがいる。24週500gが最小でNeonatalから18歳までの集中治療を行う。このICUにはECMO使用する部屋が2床あり、ほぼ常に使用している。VV-ECMO、VA-ECMOを年間40-50例。場合によってはパリ郊外のECMO centerにヘリで搬送することもあり。ヘリポートは施設内にはなく、20分くらい離れたところからヘリ搬送を行う。

 

Adult, PediatricsともにERには非常に多くの患者が来院し、トリアージからコンサルト・入院まで同じような流れで行われていた。役割が本当にしっかりしていた。Parisでも診療は予約制であり、急患の場合は日中でもERに行くことになる。ここは日本との違いと思います。


-others-
研修は朝8時30分から18時までしっかりさせていただいておりましたが、もう一つ我が教室にとって非常に嬉しいことがありました。
去年Université Descartes de Paris から当大学に交換留学生として救急科も1週間ローテーションしてくれたAndy Benziと会いました。彼は医学部最終学年として、Necker Hospital, Hematologyで3ヶ月間勉強中であり、敷地内にあるSAMUに会いに来てくれました。彼は横浜市大での研修が本当に為になったそうで、その際に当教室員から受けた「おもてなし」が本当に嬉しかったそうです。

  

ご両親が我々3人を自宅に招待してくださり食事を共にしました。ご両親からは本当に美味しいフランス家庭料理と非常に温かいお言葉を頂きました。これも教室員みなさんのお陰です。

Euro ELSO 2022

東京都立多摩総合医療センター:福井医師

今回イギリスで開催されましたEuro ELSOで発表の場をいただいたのでご報告いたします。

 

Euro ELSOはヨーロッパにおけるECMOの学会であり、ECMOの学会としては最大規模で、ヨーロッパだけでなく、米国、アジアなどから沢山の参加があります。今回はロンドンで5/4-6まで開催されており、今回は5/5のe-Posterのsessionで発表させていただきました。

発表様式としては座長の先生と発表者、数人の前でプレゼンをするような形で行い、適宜質問を受けるというような流れでした。
今回発見させていただいたのは以前にもご報告させていただいたものでKL-6がCOVID-19におけるECMO導入におけるbiomarkerになりうるかという後方視的観察研究でした。
発表でいただいた質問は、CTとの比較はどうか、KL-6が高すぎるような症例はどうか、の2つでした。経験談ではありますが、KL-6が高い症例だとCTで肺の繊維化が進んでいるような実感があり、そのような症例だと肺の不可逆性が進んでいるためECMOでも救命できないのではないか、ただCTとの詳細な比較はできていないのでそちらに関しては課題となると考えております。

 

今回の発表で感じたことは、自身の英語力の未熟さです。おそらく上記の内容はほとんど伝えられておらず、拙い英語になってしまいました。また、他の発表者の方の発表ではより深くディスカッションできていたように見えましたが、自分のプレゼンではそこまで上手くできておらず差を感じました。準備不足というより日頃英語を使用する機会が少なくこのような失敗に至ったと考えられるので、この反省を生かせればと痛感いたしました。

しかしながら、他のセッションなどを拝聴し経験のないような体外循環の試み(CO2 removal目的で使用する体外循環、心電図と同期して収縮期と拡張期で流速が変わるVA-ECMO、ECMO下での脳死判定、pre-hospitalでのECPR)を海外で行っているとのことでとても興味深い話ばかりでした。今回は参加できませんでしたが、教育セッションもあるため次回以降そちらも受講してみたいと思いました。
また、現地でたまたまお会いした先生(前橋→オーストラリアのThe Prince Charles Hospitalで基礎研究を行っている)とお話する機会があり、現在の留学生活や苦労話を伺うことができとても刺激を受けました。こちらも現地に行かなければ経験できなかったことなので現地に行ってよかったと感じております。

海外学会参加を通じて感じたことは、現地に行ってみないと分からないことが多いということです。現地でしか味わえない経験は今後の進路におけるモチベーションに繋がるものでした。今後日常の臨床だけでなく研究や海外での活動にも目を向けていき、今後またこのような機会が得られるよう精進したいと思います。
イギリスでは既に8割方ノーマスク、普段の生活を取り戻している様子でした。日本への入国はPCRが必要である点や煩雑な手続きをこなさなければならない点などまだ海外へのハードルはありますが、ヨーロッパの印象を見るとそれもなくなっていく流れになると推察します。若い学年の先生方も、一度経験すると視野が広がることに繋がるので一度このような経験をお勧めいたします。

France, Paris, AP-HP2022

横浜市立大学附属市民総合医療センター:南医師

横浜市立大学は平成27年1月にフランス・パリ公立病院連合(AP-HP)、横浜市との3者で締結した臨床・研究・教育の協力関係の構築を目的とした覚書(MOU)に基づき、救急医療をはじめとした医療分野の連携や交流を進めてきました。平成28年度はMOU運営委員会が設置され、教職員・学生の派遣および視察の受入が実施されてきました。
当教室は平成28年より毎年、教室員をパリに派遣し、現地の救急医療との交流を深めてきました。
新型コロナウイルスの世界的な蔓延で一時研修派遣は止まっていましたが、今回南医師がAP-HP, SAMUで研修を行ってきました。



この度フランス・パリのAP-HP(パリ公立病院連合)にて研修をおこなってまいりましたので報告いたします。
過去にも複数の教室員の先生方が研修をされており、私も同様にSAMU同乗によるプレホスピタル研修をおこなわせていただきました。

 

加えてNecker小児病院内の見学と地域中核病院であるLariboisiere病院およびEuropeen Georges Pompidou病院の救急部門を見学させていただいております。
SAMUはパリ市内のドクターカーシステムでAP-HPに所属する各病院に配置されていますが、私はNecker小児病院のPediatric SMURにて小児患者の対応を見学しました。
パリには中核的な小児病院が2つあり、そのひとつがNecker小児病院でした。印象的には日本の成育医療センターのような感じで専門的な小児診療および研究がおこなわれている病院です。
Necker SMURはパリ市内の小児救急事案やフランス国内の小児患者の転送事案に出動しています。私が研修中の出動は転院搬送の1例のみでありましたが、ドクターヘリ搬送を見ることができました。

出動の形態は横浜と似ており、司令センターの役割を担う組織が院内に配備されていました。出動する医師が直接救急案件の電話を確認したり、必要であれば電話相談を受けるシステムは合理的な印象でした。
また出動の合間に院内でおこなわれていたパリオリンピック・パラリンピックに向けての机上訓練を見学しました。
 
開催期間中にルーブル美術館でテロが起きた設定で、小児SAMUチームと成人SAMUチームが現場でのトリアージと患者搬送について合同で議論を行なっていました。
昨今の世界情勢やパリという土地柄、実際にテロが起きる可能性が高く、非常に緊張感を持った訓練をされていました。さらに外傷のゴールデンアワーである1時間という時間を参加者が非常に意識しており、我々が普段行なっている災害訓練とはまた違った観点での訓練が非常に印象的でした。

Lariboisiere病院とEuropeen Georges Pompidou病院の救急部門見学では実際の2次、3次救急診療を見せていただき日本と似ている点、異なる点を再認識することができました。

Lariboisiere病院はパリ10区の割と治安の悪い地域に位置しており、救急部門のトリアージと患者診療の動線および防犯体制が整っており診療体制について勉強になりました。移民問題などの欧州ならではの話も聞け、さらに中毒センターということでパリ市内中から中毒症例が集まってくるということで興味深かったです。


今回3病院をまわらせていただきましたが、いずれの病院においても医療スタッフの方々がとても優しく、フランス語がわからない自分にとても気を遣ってくださり非常にありがたい限りでした。他国の医療システムを知ることはもちろんですが、現地の医師、スタッフの方々とコミュニケーションをとることで、同じような想いや尊敬すべき意思を持って医療をされており、自分を鼓舞するきっかけになりました。


当教室では、教室員の国内外の研修派遣や留学について本人の希望に添えるよう、世界で活躍できるように教室全体で応援していきます。

EuroELSO2024参加報告

EuroELSO2024:谷口医師

2024/4/23-27までの会期で、ポーランドはクラクフにて、Euro ELSO2024が開催されました。

今回この学会に参加ならびに発表をする機会を得ましたので、御報告いたします。
 

Euro ELSOは、ヨーロッパにおけるECMOの学会です。今回が第12回目であり、1500人程度の規模になります。Euro ELSOは、ELSO(30年前に発足、北米中心)のヨーロッパ支部ですが、VV-ECMOでは、EOLIAstudyや、CESARtrial、そしてECPRではPrague study、INCEPTION tiralなどヨーロッパからであり、Euro ELSOの方が人気があります。
今回、広島大学の志馬先生らにAMEDの分担研究者として参画させていただき、CIRISIS(日本のCOVID19データベース)を用いて、日本におけるECMO中の出血性合併症についてその特徴と死亡に関する検討をしましたので報告して参りました。

発表はe-posterであり、日本と同じようにプレゼンテーションを行い、質疑応答でした。緊張はありましたが、Euro ELSOは英語圏でない参加者もおり、流暢な英語ではなくても許容され、Japanese Englishで、そして大きな声で発表しました。
 
内容の詳細は割愛しますが、国ごとに人種、患者背景、使用するECMOデバイス、ECMO管理方法などが異なり、多くの因子が関係するECMOにおいては、国ごとにその特徴を知り、対策を持つことが大事かと思いました。
ECMO中の出血合併症には、vWFが関係しているとされています。ECMO中にvWFが消耗され、後天的VWF欠乏に至るからです。またvWFの血中濃度は実は血液型に関係するとされ、O型には少ないとされます。ECMOの有用性はコロナや最近のECPRのstudy等で今まで以上に認識されてきましたが、出血合併症が死亡に関する一番のリスクファクターですので、これをコントロールする術を見出すことがさらなるECMOの有用性に向上につながるものと考えています。
さて肝心の学会での知見ですが、以下に概略をまとめます。
今回はECPR推しの学会でした。

  1. 呼吸ECMO
    今回は特に目立ったトピックはなく、セッションも少なく、COVIDの終わりととも下火になっていました。かなり残念でした。
  2. ECPR
    ARREST、Prague、INCEPTIONと大きなECPRに関するRCTが行われましたが、そのfirst authorたちがプレゼンをしておりました。
    ただ結論は、ECPRで助かる人は20-40%程度であり、蘇生率を上げるためには、1)地域のシステムをいかにうまくコントロールするか、
    2)患者選択をどうするかであると述べており、地域・国ごとに戦略を練るしかないと感じました。ただ欧米では病院到着まで60分かかるのが
    一般的であり、病着が早ければ30分の日本においては、それこそpre-hospital ECPRなどを組み合わせれば、欧米の蘇生率を超える結果が得られるのでは
    ないかと思い、日本?横浜?からの発表を目指したいと思いました。またECPRをして助からない場合でも、その24%が臓器提供ドナーになり得るため、ECPRの意義は大きいとの発表されておりました。donation after cardiac death:DCDという考え方です。日本でもECMO界隈ではこの話が出ていますが、その進みは遅いようです。その他としては、自己調整型の拍動流ECMO(controlled reperfusion of whole body :CARL)が欧州では発売されましたが、まだまもないためそのエビデンスや使用上の工夫などが発表され、会場を盛り上げていました。https://resuscitec.de/de/業者に日本でも使えないかと聞きましたが、米国でも販売もまだまだであり、日本はかなり先になりそうです。テルモなど国産メーカーに期待するところです。
  3. ECMOシミュレーション
    ECMOのシミュレーションに関するセッションがいくつかありました。
    ただ、欧州においては、シミュレーションは看護師やMEが主導で行う感じであり、医師の介入は少なさそうでした。
    そして手前ミソですが、日本で行われているシミュレーションは欧州に劣るものではなく、自信を持っていいものだと認識し、
    今後も更なる改良を加えていこうと思いました。またECPRのカニュレーションのタイムトライアルがあり、フランスのSAMUチームなどが目立っていました(シミュレーションでもカットダウンでした!!)。これは挿入のスキルだけでなく、チームダイナミクスなども大事なファクターであり、ぜひ今後センター病院でも、さらには関連施設交えてのタイムトライアルも行ってみたいと思いました。

 
ELSOでは、自分が読んだ論文の著者らが目の前におり、彼らがまた次の研究を進めているところを目の当たりにすると、そのアクティビティの高さに感銘を受けました。そして、逆に彼らがまだ注目していない点、自分としては肺エコーやrSO2については出し抜くチャンスがあるとも思いました。また今回はECPRがメインでありましたが、世界を真似るのではなく、日本オリジナル試みであっても十分通用すると感じましたので、Think globally, Act locallyの気持ちで、論文を読んでるだけでなく、彼らができていないことを
せひ横浜でやっていくを目指すべきかと思いました。
 
またポーランドのクラクフですが、学会がなければ行くことがなかったと思いますが、アウシュビッツ収容所がある街としても有名であり渡欧にあたり色々勉強しました(ただ自分霊感が強くアウシュビッツには行けませんでした)。島国日本と違い、地続きの国は国を維持することも大変であるのだなと学びました。物価は、昨今の欧米では珍しく日本と似たような感じでしたが、ポーランドは活気があり経済成長もしているようで、あっという間に日本を追い越しそうです。最近海外に行くといつも思いますが、日本はこのままでいいのかと考えてしまう旅でした。


今回も国際学会を通じて海外からの刺激を受け、今後に向けての課題やテーマが見つかるような国際学会の参加だったようです。
当教室では、積極的に国内外の学会への参加をすることで、知見を増やし、患者さんに少しでも還元できるような研究・教育体制をとっています。
ご興味のある方はぜひご連絡ください。

ATS2025(American Thoracic Society)参加及びWeill Cornel Medical College訪問報告

附属病院小川講師より

<ATS2025, San Francisco>

American Thoracic Society(米国胸部学会)という世界で一番大きな呼吸器学会です。https://conference.thoracic.org/
Abstractは約7000、Speakerは29000人 参加者を合わせると...というような巨大な学会です。

この学会に初めて私が参加したのが2013年 Philadelphiaでありました。
そこから、2014,2016,2017,2018とこれで6回目の参加です。
私には本当に思い入れが深い学会です。初めての国際学会での発表がこの学会でありました。
またJoe Ray Wright Awardという学会賞を受賞したのもこの学会です。
この学会に演題が通るのが呼吸器領域の一つの登竜門というところもあり、今回は2演題が通りました。
 
??なぜ呼吸器?というところかと思いますが、私はもともと胸部外科(心臓血管外科・呼吸器外科)というBackgroundがありまして、大学院も呼吸器系疾患というより肺癌のリンパ節転移に関する基礎研究で取得しています。
初回参加した際の演題は、「COX-2-derived PGE2 forms SDF-1-expressing premetastatic niche via EP3 signaling in mediastinal lymph node with accumulation of immature dendritic cells.」まさにリンパ節転移を防ぐためにはどうしていくかというような内容です。

 

そこから基礎研究が始まったわけですが、今回の発表の内容は、

「Long-Acting Muscarinic Antagonist for Asthma Recovers Mucus Production and Normalizes Cilia Function in Epithelium with Human Airway Basal Cells in vitro ALI Model」
「Long-Acting Beta2-adrenergic Agonist and Inhaled Corticosteroids for Asthma Induced Mucus Production with Human Airway Basal Cells in vitro ALI Model」

喘息吸入治療薬に関する新しい発見を話しました。
おそらく、皆さんは気管支拡張薬(Inhaled Drugs, Bronchodilator)ということで、気管支平滑筋に働きかけて気管支を拡張させるということで、治療ラダーにしても、ICS→ICS+LABA→+LAMA→Tripleという構図があるかと思います。
これはClinical dataから得られた呼吸機能や症候からの治療方針の決定であったような状況です。
しかし、よく考えてみると、気管支拡張薬は直接平滑筋に働きかけるのでしょうか?
平滑筋に届く前に気管支上皮というバリア機能があるでしょう。ここを通過する時に何も作用していないの?というのに疑問を持ち、基礎研究を行っておりました。
 
私はニューヨークWeill Cornell Medical College, Crystal Labに3年半留学しており、そこで気道上皮細胞の特殊細胞系Air Liquid Interface(ALI) modelというものを習得し、それを日本に帰国してから行っておりました。
初めは失敗の連続です。ニューヨークでは、肺がん関連の仕事。帰国してからARDS modelを作成していて、その系の確立に苦労しました。
呼吸器内科の金子教授をはじめ、呼吸器内科の大学院生を教えながら喘息やCOPDの研究をしておりました。
金子教授は粘液産生細胞(Mucus Cell)の権威であり、私は被らないようにとCilia(線毛)に注目しました。喘息の病態は、機動分泌物が増え、それが排出できないということも気管支狭窄と同じくらいの問題になります。
LABA,ICS,LAMAを加えることでどのようになるのかということを研究していました。

セッションが始めると、非常にたくさんの方から質問を受けました。
どんな薬を使っているのか、Inhaled Drugだがlower chamberに加えても大丈夫なのか?clinical dataでは色々とみていたけど、Biological dataとしてこんなわかりやすいdataは見たことがないなどとお話しされました。
みなさん「ポスター発表ってなんかレベルが低いもの」と思われがちですが、一般口演は5-7分に3-5分の質疑応答がついてきて、その後は何もないと言うことが私は好きではなく、国際発表のポスターセッションは2時間くらいポスターの前に立っているとファシリテーターが回ってきて、次々と研究者が回ってきてくれて、いろんな話ができます。名刺交換ももちろんです。なので私は国際学会であれば断然ポスターを選択しています。
今回もたくさん英語でお話しできて本当に楽しい時間を過ごしました。
日本からも多数の施設から学会参加されており、交流を深めました。

 

次回は、Orlandoで開催されます。絶対に行こうと思いまして、現在研究の進行を進めています。


<Weill Cornell Cornell Medical College, New York>

私が2014年から2018年まで留学していたところで、呼吸器関連の基礎研究をさせていただいておりました。

BossのRonald G. Crystalは30代で教授となり、呼吸器内科で世界的に有名な人です。
現在彼のラボに横浜市大4年生のリサーチクラークシップで3年前から学生を派遣しています。今回はそのお礼も兼ねて訪問しました。
久々の再会で緊張していましたが、実際に会うと非常にかっこいい!
全く変わらない姿勢に感動しておりました。

 
 

こちらが学生の受け入れについてお礼をいうと、「いやいや、君の送ってくれる学生はexcellentだから非常に助かっている。彼らは本当に頑張るからぜひ今後も送ってくれ」とおっしゃっておりました。
それから自身の現在の基礎研究の話をし、さらなる研究のアドバイスをいただき、今後も一緒に研究を続けていく算段となりました。
本当にありがたいことです。

ボスと30分ほど話をして、officeの旧友たちと最近のこと、子供たちのこと、日本に行きたいから教えてねなどとお話をしてラボを後にしました。
医学部5年生井野くんと

ラボを離れると、少しずつ寂しさが増してきましたが、私の留学が自分にとって本当に良かったんだなと再認識することができました。

 

現在当教室から山口先生、南先生の2名が教室から海外留学に行っていますが、「憧れだけではいけません。行ってみないとその価値がわかりません。」お金も無くなるし、臨床経験ができないと思うかもしれません。
そんなのは後からなんとでもなります。でも留学の時期を逃すときっと一生行けません。留学はしなくてもいいかもしれません。けど、行けば何かがきっと変わります。
ぜひみなさんには世界への第一歩を勇気を持って進めていってほしいと願っています。留学等に興味がある方はいつでも連絡をいただければと思います。


このように当教室では、国際学会の発表や海外留学に関して、よりGlobalな視点を持てるよう推進しています。
ご興味のある方はぜひご連絡ください。


国際交流

コロンビア大学島田先生講演会(2018.7.3)

『米国医学留学のすべて』
『海外医学留学のすべて』

『米国における卒然卒後臨床教育の実際』と題して平成30年6月27日にニューヨークコロンビア大学循環器内科に所属する島田悠一先生に講演をしていただきました。当日は、医学生、若手医師をはじめ60名以上の方が来場されました。
 
第1部として、島田先生のアメリカでの臨床留学の経験に基づいて、臨床留学の意義、留学に伴う代償など、臨床留学のメリット、デメリットをご講演いただきました。
 
第2部として、島田先生に加え、基礎研究で留学していた当教室の小川医師にも加わっていただき、基礎・臨床留学に関わることに関して来場された方と意見交換が活発に行われました。留学での経験、目指した理由、USMLEの対策などから実際にアメリカでの生活に関わることまで非常に活発な議論が行われました。特に医学生から多くの質問があり、両名の先生方から非常に貴重なアドバイスをいただいておりました。 

Franceから留学生受け入れ(2018.7.5)


現在、横浜市立大学附属病院市民総合医療センター高度救命救急センター(横浜市立大学救急医学教室)に2018年7月よりUniversité Paris DescartesからAndy Benzi (medical student, 4th grader) が1ヶ月間留学見学実習を行なっております。

 

滞在中は救急スタッフ・研修医・医学生と共に救急・集中治療の現場はもちろん関連病院・消防などの横浜および日本の救急現場の実際を経験してもらうプログラムを組んでおります。このプログラムを通じて日本・フランス間での救急・集中医療の共通点・相違点を学び双方の発展に繋がることを目指しております。

 

Franceから留学生受け入れ(2019.7.15)


2019年7月 よりUniversité Paris Descartesからの Sieta Gassama (medical student, 4th grader)が 交換留学プログラムにて当大学に来て、当科で2週間の研修を行いました。

 

昨年(Andy Benzi, medical student, 4th grader)に引き続き 福浦およびセンター病院での臨床実習で救急スタッフ・研修医・医学生と共に救急・集中治療の現場はもちろん、救急医療におけるシュミレーション実習・関連病院で横浜および日本の救急現場の実際を経験してもらうプログラムを組んでおります。また本年は基礎研究室の活動性向上に伴い、救急科で行なっている基礎研究を指導医・大学院生・医学生とともに体験してもらいました。また、7月13日・14日両日センター病院で当教室が主催するJATECTMに参加し、外傷診療についての講義・実技を体験してもらいました。

 


今後2週間毎に形成外科・整形外科・泌尿器科を実習し、 2ヶ月の日本の滞在の予定です。この交換留学プログラムを通じて日本・フランス間での救急・集中医療の共通点・相違点を学び双方の発展に繋がることを目指しております。

インドAIIMSから横浜視察(2019.8.21)


8月15日AIIMS All India Institute of Medical Science JPNA Trauma Centerよりマルホトラ所長はじめ4名の先生(Dr. Amit Lathwal、Dr. Abhinav Kumar、Dr. Samarth Mittal)が来横されました。

AIIMSはインドのニューデリーに位置する巨大な医科大学であり臨床だけでなく研究も非常に積極的に行なっている病院です。現在インドでは個人の車所有が増える最中、交通法整備がされておらず交通事故による死傷者数が爆発的に増えているようです。AIIMSはそれらの重症外傷を一手に担っており年間の外傷手術件数は7000件にも登るようです。

今回、川村と山口先生はアテンドとして先生方にお供させていただきました。
 
以下が当日のスケジュールです。
10:00〜11:45 横浜市大付属病院紹介 ACU、研究ラボ等施設紹介
11:45〜12:30 食事at ロイヤルパークホテル シリウス
13:30〜14:00 横浜消防(保土ヶ谷)見学
14:30〜15:30 対テロ合同多機関訓練(日産スタジアム)

以上報告となります。
4人の先生方には非常に好感いただけ満足していただきました。
今回の交流をきっかけにAIIMSの先生方とさらに親交を深めて教室を発展していければと思っております。

Thailandから留学生受け入れ(2020.1.31)


2020年1月よりThammasat University, Thailandからの Peerada Kobkarnsakul (medical student, 5th grader)が交換留学プログラムにて当大学に来て、当科で4週間の研修を行いました。

世界各国でCOVID-19の感染拡大が広がる中ではありましたが、センター病院・福浦・横浜/横須賀の救急科関連病院での臨床実習で救急スタッフ・研修医・医学生と共に救急・集中治療の現場はもちろん、救急医療におけるシュミレーション実習・関連病院を経験しました。救急医療は母国タイでも経験がなく、日々新鮮な体験が刺激になったようです。
 
滞在中、日本でもCOVID-19拡大により救急車同乗や各施設への訪問など横浜の救急医療を紹介することができませんでしたが、各教室員が工夫を凝らし、横浜および日本の救急現場の実際を共有することができました。

当教室では海外留学生にも満足してもらえるプログラムを組んでおります。また本年は基礎研究室の活動性向上に伴い、救急科で行なっている基礎研究を指導医・大学院生・医学生とともに体験してもらいました。
 

期間中、off the job trainingの開催はありませんでしたが、何事にも積極的に参加する彼女に我々も当大学医学生も非常に刺激を受けました。

この交換留学プログラムを通じて日本・タイ間での救急・集中医療の共通点・相違点を学び双方の発展に繋がることを目指しております。

タイ・タマサート大学建築学科学生が高度救命救急センターを見学しました


横浜市立大学グローバル都市協力研究センター(GCI)では、持続可能な都市のための国際学術コンソーシアム(The International Academic Consortium for Sustainable Cities:IACSC)のメンバー大学であるタイ・タマサート大学のFaculty of Architecture and Planning (TDS)の学生を招聘し、6月12日~18日でTDS + GCI International Summer Schoolを開催しています。
テーマは、「Cities at Risks - Urban Resilience to impacts of Climate Change(都市の危機ー気候変動に対する都市のレジリエンス)」です。​

初日(12日)は、高度救命救急センター部長/主任教授の竹内一郎先生が、「災害時の病院の役割」について、DMAT(災害派遣医療チーム)の活動なども含めて、タマサート大学の学生8名、横浜市立大学の学生5名に講義を行いました。​
講義後は、高度救命救急センターおよびヘリポートを見学し、災害時の都市のありかたについて理解を深めました。

当教室は国際交流も積極的に行なっており、海外からの学生の受け入れも行なっています。
医学生のみならず、他学部との国際交流をこれからも継続していきます。