活動報告 2026.7.14
リサーチクラークシップ発表会2026
-医学部4年生研究室配属-
【研究へのとっかかり】
横浜市立大学医学部では、毎年医学部4年生全員が4月から3ヶ月間臨床・基礎・国内留学・海外留学を行い、research mindを形成すべく、研究を行います。
毎年当教室も学生を受け入れ、学会発表はもとより英語論文作成など素晴らしい成績を納めてきました。
本年も2026年7月14日、15日の両日で彼らの発表がありました。
当教室の研究指導者である小川医師より報告です。
本年度、当教室には1名。Weill Cornell Medical College(NY:私の留学先のLab)に2名の計3名が配属されておりました。
発表は無事に修了し、配属された3名の学生が素晴らしい研究成果をまとめました。
各演題の核心部分を簡潔に要約いたしました。
| 渡邉優理さん:アルツハイマー型認知症の治療ターゲットとしてのAPOE変異の検索(Cornell, 小川) |
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【背景・目的】 アルツハイマー型認知症(AD)の最大の遺伝的リスク因子であるAPOE遺伝子において、一部の保護的変異(Christchurch変異等)が病態の進行を抑制するメカニズムの解明を目指しました.
【結果】 培養上清を用いたヘパリンカラム結合能評価(HSPG結合能の代替)において、APOE2 Christchurch(E2Ch)変異体が最も強力にHSPG結合能を低下させることを実証しました. 一方、アミロイドβ凝集アッセイではJacksonville変異などで予想外の凝集促進が見られ、保護的効果の機序が単一ではないことが示唆されました.
【意義と展望】 E2Chが細胞表面の足場への結合を阻害してAD進行をブロックするという仮説を支持する結果であり、次世代のAAV遺伝子治療ベクター最適化への重要な足がかりとなります。
| 小田中眞衣さん:AAVベクターの細胞内輸送におけるSTX5の役割の検討(Cornell, 小川) |
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【背景・目的】 遺伝子治療の運び屋であるAAVベクターは、人によって発現効率(薬効)に個人差があります. 本研究では、細胞内輸送の鍵を握るSNAREタンパク質「STX5L」がAAVのトランスダクションに与える影響を評価しました.
【結果】 ヒト心筋細胞(T0539)を用いたSTX5L欠損株のスクリーニングにより、AAV2, 5, 6は影響を受けないのに対し、AAV8, 9、特にAAVR非依存性経路を持つAAVrh32.33において遺伝子導入効率が劇的に上昇することを見出しました. さらに、STX5Lを再導入(Rescue)すると効率が通常レベルへと回帰(抑制)しました.
【意義と展望】 STX5Lが特定のAAV血清型に対して「細胞内輸送の関門(ブレーキ)」として機能しているという、これまでの常識を覆す発見です. 患者個人の背景に合わせた個別化遺伝子治療(Tailored Gene Therapy)の設計に大きく貢献します.
| 鮫島久諒さん:立ち上がり動作解析による高齢者の転倒予防(附属,三澤・小川) |
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【背景・目的】 高齢者の救急搬送原因の8割以上を占める「転倒」のインシデントを未然に防ぐため、フォースプレート(大型設備)の代わりに「スマートシューズ」を用いて、日常生活で簡便に転倒リスクを評価する手法を模索しました.
【結果】 若年者、転倒歴なし高齢者、転倒歴あり高齢者を対象とした椅子からの立ち上がり動作解析において、高齢者群では立ち上がりから静止立位に移行する時間(peak~steady時間)や重心総移動距離が有意に延長することを確認しました. さらに、「Y重心の切り返し幅の分散」が、転倒歴あり群で増大する傾向を捉えました.
【意義と展望】 姿勢を安定化させるための微修正コントロールが不規則になっている病態(フレイル/サルコペニア)を、ウェアラブルデバイスで検出できる可能性を示しました. 今後はカットオフ値を設定し、ジャイロセンサーを応用した「転倒予防支援シューズ」の社会実装を目指します.
私は座長をしながら、発表を見ておりましたが、3人とも自分の実験をしっかりと理解し、結果の解釈も問題なく、発表も堂々とし、質疑応答もしておりました。
ぽんぽんと質問が出てくるようなDiscussionは、非常に興味深く、横浜市大の学生のレベルの高さにもびっくりし、このようなことは、学生時代にはとても経験できないことなんだろうなと思いました。
毎年この発表会に参加していますが、非常に良い時間を過ごせました。
今回3人ともに、データ解析(PythonスクリプトやELISA等)を自ら動かし、しっかりとした形を残すという成果が見れました。
今後も救急医学教室で学生研究にも学生とともにいい成績が出せるように精進していきたいと思います。
当教室では、附属病院を中心に基礎研究・臨床研究を展開しています。
それは医局員だけでなく、学生の研究の指導も行なっており、よりレベルの高い研究ができるよう、将来医師になった後もそのリサーチマインドを忘れないような指導を行なっています。
また、Weill Cornell Medical College, Genetic Medicineへの留学経験から、その関係性をずっと続けており、医学生のために良い経験ができるように体制を整えています。
ぜひこのような活動に興味がある方はぜひご連絡いただければと思います。