活動報告 2025.11.4
ESICM2025(European Society of Intensive Care Medicine)参加及びFrance留学先訪問報告
ESICM(European Society of Intensive Care Medicine)はヨーロッパ集中治療学会の略称でSCCM(アメリカ集中治療学会)と並んで世界最大規模の国際学会です。横須賀共済病院で昨年研究した鼠経シース挿入の際の合併症について調べた研究でeposterでの発表を行いました。
まず登録の際に910ユーロ(16万円)という学会参加費の高さに驚きました。
日本の学会とは比べ物にならない参加費ですが、国際学会はこんなもんだそうです。
会場はミュンヘン国際会議場で東京ビッグサイトのような感じでしょうか。大きなホールが二つとオーラル用の会場が10個程度です。大ホールに40を超える企業が展示を行っており、eposterの発表は企業展示のすぐ後ろで行われました。全てのブースが密集しており、あまり歩かないで散策できるように配慮されておりました。
初の国際学会に一人で参加というところでかなり不安でしたが、横浜医療センター時代の知り合いの医師がおり、JA広島の二人の医師と聖マリアンナ病院の神経ICUの先生と5人で1日目の昼に食事を共にさせて頂き、交友を深めました。
1日目の午後が発表でした。6月に演題採択が決まってからオンライン英会話等、英語の勉強をして臨みましたが、やはり質疑応答がネックでリスニング・スピーキング共にニュアンスまで伝えるのが難しく勉強を続けなければいけないと思いました。日本の学会よりもdiscussionが盛んで質問が4個もされ、国際学会を感じました。
アプリで調べたのですが、日本人の参加は28人で聖マリアンナ医科大学病院と東京ベイ浦安病院がグループ(4-5人)で参加しており、その他は2人で参加している人が多かったです。グループで参加できている聖マリアンナ大学病院の組織力の高さを感じました。ちなみに5年連続で来てる先生に聞いたのですが、毎年同じような日本人の顔ぶれらしいです。
2日目は主に企業ブースを回り日本では見られない機械を見学しました。
特に面白いと思った二つの機械を紹介します。
①横隔膜の動きを数値化するモニター
横隔膜の動きが悪いと抜管後の再挿管リスクが高いことは言われていますが、横隔膜の前後に大きい電極をつけてリアルタイムで横隔膜の動きをモニタリングし、数値化する機械。写真を添付するので参考にして下さい。上のモニターはデモの人につながっており、下のモニターは実際に再挿管になった人のデータだそうです。青い数字が横隔膜の動きの数値で1.5を下回るとリスクとのことです。
②CRRT+CO2リムーバー
CRRTの際に透析のダイアライザーに加えてCO2リムーバーをつけてミニVV-ECMOを行う機械。13Frのカテーテルで最大0.5L/minのフローをとって行い、酸素化はできないけどCO2リムーブのみ行うそうです。pHを保ち臓器サポートを狙っているそうです。こちらも写真を添付します。右が通常の透析のダイアライザーで左がCO2リムーバーです。
ワークショップやハンズオンは高額すぎて申込しなかったのですが、学会主催の脱出ゲームが無料だったので参加しました。イタリア人5人+道下というチームで部屋のなかのクイズ(診断問題や適切な抗菌薬を選ぶ問題等)を解きながら脱出を目指すゲームです。言語の壁はありましたが、脱出ゲームをしたことがあったので少しはチームの役に立ち、無事脱出することができました。脱出成功率は30%ぐらいでした。脱出後にイタリア人とハイタッチし、とても楽しかったです。
学会全体では中国人のレベルの高さに驚きました。中国人は60人以上参加しており、10個しかないベストアブストラクトに中国から2個選ばれておりました。実際ベストアブストラクトの発表を聞きましたが、研究のレベルも高いし、質疑応答も完璧で驚くばかりでした。また中国含めていろいろな国の学生が発表しており、それにも驚きました。
余った時間は観光していました。ドイツは物価が日本と同じぐらいで治安も良く人も優しく、とても過ごしやすかったです。
費用や研究・発表の準備等ハードルも高い国際学会ですが、初めて参加して、とても刺激を受けました。去年鈴木先生がANZICSで発表しており、自分も発表したいと思ったのが参加のきっかけです。
横浜市大救急医学教室が国際学会でも存在感を示していけるように願っています。自分も引き続き頑張ります。
せっかくヨーロッパに来たので夏休みを利用してフランス・パリに留学中の南先生の病院訪問と見学をさせて頂きました。
南先生がデータ解析研究を行っているラリボワジエールAP-HP病院はパリの北に位置しAP-HPはパリ公立病院連合を意味しているそうです。ネットで調べたのですが、病床数は1333床でした。1850年代にナポレオンの妻が作った病院で増築されている部分もありますが、中心は1850年の建物が今も使用されています。病院内に教会があり、ヨーロッパを感じました。パリの病院は病院ごとに特色があり、この病院は産科救急と中毒センターが特色とのことです。
南先生は院内の研究棟でデータ解析の研究を行っていました。
オーベンが二人いて与えられたテーマで複数の研究テーマを同時に進めていました。指導体制はとてもしっかりしており、大きな研究をするにはプロセスを一歩一歩踏んでいく必要があるのと指導者が必要であることを強く感じました。1日1日のノルマ等はなく、次の休暇までにここまでやってみようかみたいな感じだそうです。マウスの研究をしているわけではないので研究室ではなく、カフェ等でデータ解析を行う人もいるそうで自由だなと思いました。
研究室には数名の留学生がおり、今は南先生とシリアの女医さんがいました。日本人は1年以上いる人がほとんどですが、欧米人は数週間〜数か月で移動する人も多く人の出入りは激しそうです。
定期的に英語でリサーチミーティングをしており、そこが大変だと南先生は言っていました。当たり前ですが、院内はフランス語の表記しかなく、ここで生活しながら英語でdiscussionしている南先生はすごいと思いました。
余った時間はパリ観光をしていました。12年ぶりにパリに来たのですが、2024年のパリオリンピックを契機に警察の数を増やしたそうで、治安は驚くほど良くなっており、一人でぶらついていましたが、スリ等の危険は感じませんでした。
このように当教室では、国際学会の発表や海外留学に関して、よりGlobalな視点を持てるよう推進しています。
ご興味のある方はぜひご連絡ください。