報告

 施設間取組報告 

関連施設間サイトビジットにおける相互評価


当教室横浜市立大学医学部救急医学教室は、横浜・横須賀地域の救急診療の中心的な役割をになっており、数多くの関連施設に教室員が在籍し、日々の救急診療・集中治療にあたっています。
その関連各施設での診療体制についてそれぞれの施設にサイトビジットを行い、相互評価を行い、より良い救急診療・集中診療を行う体制を作っています。
 
この関連施設間相互評価の目的は以下の通りです。
1. 診療の質の向上と教育の充実
2. 診療・臨床研究における相互協力の促進
3. 労働環境の改善(教育環境や働き方改革など)
目指すは、相互施設の優れた点を学び、改善点を提案することで、教室全体の質的向上です。
 

 横浜市立大学附属市民総合医療センター病院  2023.12.26

横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターに2名の施設長が赴き、毎日行われているカンファレンスに参加し、その評価を行いました。
 


<総合カンファレンス>
前日の当直帯で対応した症例についての症例共有とその初期対応・問題点について全体に共有します。


 
<ICUカンファレンス>
救急集中治療室に入院していいる患者の現状・問題点・当日の診療方針について多職種(看護師・薬剤師・リハビリ・栄養士など)で情報を共有し、その診療の共有をします。


 
<病棟カンファレンス>
超急性期・急性期を脱した患者の現状・問題点・当日の診療方針について多職種(看護師・薬剤師・リハビリ・栄養士など)で情報を共有し、その診療の共有をします。


以下のカンファレンスに参加させていただきました。

  • 8:00~8:50 全体カンファレンス
  • 8:55~9:45 ICUカンファレンス
  • 9:47~10:00 SDU/後方カンファレンス

 
参加したカンファレンスにおける良い点は

  1. カンファレンスは時間厳守で始まり、進行表が前方に提示されており、司会が時間調整を行いながら進行をまとめていたこと。
  2. カルテがレジストリのデータベースへ移行しやすいフォーマットを使用していたこと。

(今後診療の質を評価するためには、レジストリでの評価が不可欠と思うのでその基盤になるカルテとなっていたこと。)

  1. ICUでは多職種が参加し、チームとして患者治療にあたっていたこと。

(カンファレンスにNs, 薬剤師, リハ, 栄養士と入っており, 今必要なことをその場で打ち合わせることができるのは素晴らしい体制と思いました。)
 
一方で、改善点としては以下のような事項が挙げられました。

  1. 一症例に対するディスカッション時間が十分に確保することが困難であること。

(時間的制約がどうしてもあるため)

  1. 発言者の声が少し小さく、聴取が困難な場合があること。
  2. ICUカンファレンスでは前日の問題点に焦点が当たりがちで、各臓器別の治療や今後の治療方針についての検討が十分にディスカッションできなかったこと。

(そこに関しては谷口先生から各患者に対して、問題点の対症療法だけでなく、原因検索や治療のアセスメントに関する指摘・指導がありました。)


カンファレンス参加後センター長・副センター長・施設長で総合討論を行い、その評価を共有いたしました。
 
良かった点・改善点などを相互的に討論することによって、普段その施設で行なっているカンファレンスが「独りよがり」になっていないか、多職種との連携はうまくいっているか、若手医師・専攻医・研修医の教育体制はきちんとできているか、来春から本格的に開始される働き方改革に向けてどのような課題があり、それを解決する方法についてなどを抽出することができました。
その詳細については、全教室員に共有され、関連各施設での方針などにも取り入れ、良いことはより良く、改善すべき点は改善するという相互的に非常に良い討論の場となりました。
当教室ではこのような関連施設間での診療体制・教育方針・多職種連携などを今後も相互的評価を行うことで、より良い救急医療・集中治療体制の構築を進めていきます。
今後も関連施設のサイトビジットを近日中に予定しております。

 横浜医療センター  2024.2.1


横浜医療のカンファレンスに参加して感じたことは
・診療のレベルが高い
・研修医のレベルが高い よくできる
ということです。
日ごろから接している 2大学病院に比して、そのように感じました。
これは今までの横浜医療センターで古谷先生・大塚先生が築いてこられたよき伝統であり、また、教室としても「質の高い診療」は最も大切にするところです。引き続きこの点の維持、よろしくお願いいたします
 
次に感じたのは、
・環境のよさ、です。
多方面から獲得した治験費等により、豊富な書籍を購入し 整備されています。一方で せっかくの購入した書籍の本棚が一緒に本棚に不要物まで多数おかれている」状況になってしまっていて、これはもったいない、と感じました。研修医にとってこのような参考図書が揃っていることは教育機関として重要です。 
一方でセンタ―病院、福浦救急では 図書購入費用を十分に捻出できず、ここまでシリーズ全巻購入などができていない、やりたくてもできない、のが現状です。この点でも 横浜医療は「さすが」と感じました。
 

<フィードバック>

「有効な時間の使い方」
「教室のスローガンである当直明け者は必ず院外で昼食をとるためには」
「時代にあった教育とは」について議論しました。
改善するとしたら、現状のカンファレンスが、

教育
診療の質を保つための議論
申し送り事項 

この3項目すべてが一つにまとまっているのでどうしても時間が長くなってしまうのではないか?
全員で、すべてのことを同じように共有しているのではないか?
これを上が知っておくべきこと、当直者がしっておくべきこと、現場医師が知っておくべきこと」と区分してうまく時間と質との両立ができないか
について提言させていただきました。
また教育の体制、内容についても 今の時代にあわせたスタイルに変えていくことは可能かもしれない、という議論しました
 
このような横浜医療の高いレベルの診療の質、高いレベルの教育、そしてそれにこたえるレベルの高い研修医とレジデントのよき伝統を継続しながら「時代にあわせた」時間短縮の取り組みが両立できると もっとよい体制に
なるのではないかと確信した次第です。
その確信ができたからこそ 一言でいうと「今回はいいサイトビジットだった」と感じました。

 横須賀共済病院  2024.2.20


①救急ICUにおける患者情報共有(8時30分-)
救急医師・ICU看護師・薬剤師など10-15名が参加し、救急ICU入院中の患者の申し送り
当直医師が中心となり、前日夕方カンファレンスでの個々の患者の計画・夜間入院患者の申し送り、入院患者の注意事項・ベッドコントロール等を10分間程度の話し合いが設けられておりました。
1日の始まりに多職種で患者の情報共有を行うスタイルが学びでありました。
自施設においても上級医が集中治療系リーダーナース・集中治療系師長と患者の情報の共有は毎朝しておりますが、全員同時での共有ではなく、薬剤部・リハビリ部とも共有するスタイルもいいのではないかと持ち帰っての相談事項であると感じました。
 
②救急医師室における当直対応入院患者・ICU患者および病棟入院患者の個々の申し送り(8時40分-10時10分)
施設長がタイムキープ・司会をするような形で担当専攻医(今回は3名)が患者のpresentationをBy systemで行っておりました。
専攻医はBy systemのpresentationの中に、根拠を述べた上での患者の現状とプランについてそれぞれ述べるような形であり、その根拠に乏しい場合、その計画が明確になっていない場合には、しっかりと上級医がそれを追求し、教育するシステムが構築されていました。
10時終了を目安にカンファレンスを終わらせることを意識されながら進行されておりました。
この中で、病院支給iPhone SEでカルテappを使用した院内外での患者カルテ・画像・検査データの共有、および救急科内での患者情報共有appを有効活用していたのが非常に印象的でありました。セキュリティー問題もしっかりされており、このようなツールがこのDX時代に今後関連施設でも増えてくると感じました。
 
③フィードバック
カンファレンスに関する上記の評価と、このサイトビジットでの気づきや自施設にも持ち帰りたいことが上記の如く共有し、その点について横須賀共済病院救急科としての方針等を伺いました。大方針がしっかり立てられており、それを実践していると思いました。
研修医に関して、1年目・2年目で20名ずつということで、救急科においては、研修一年目は症例をとにかく経験するために救急外来配置に、研修2年目はすでに入局先は決まっているが、救急科をとることによって救急ICUにおける集中治療をメインに研修しており、朝カンファレンスは専攻医・上級医からその治療方針の決定・presentationなどを学び、病棟での実践・夕カンファレンスでのミニレクチャーで実臨床を学んでいるということで、そこで合点がいきました。
さらに、その夕カンファレンスには、少しでも研修医・専攻医に知識・経験を積ませようとスタッフがネタを毎日考えたり、都度教育しているということを伺いました。
この救急教育体制が横須賀共済病院から多くの教室員としての獲得につながっているのだと思いました。この研修医教育も大学や他施設と異なるところが人材の面からあるにせよ、屋根瓦式教育もしっかりされているということがわかりました。

 横浜市立大学附属病院  2024.3.19


8時30分からカンファが始まり、9時30分頃より病棟回診、9時50分からCCU/ACUミーティング、10時からICUを踏まえた中央部門ミーティングの流れを参加いたしました。
大学附属病院の特徴として、多くの初期研修医(本日は7名)がローテイトする点が市中病院と異なるところで、その工夫が垣間みられたサイトビジットでした。
カンファに関しては、初期研修医が主体となりプレゼンして専攻医がサポートしていました。
間違いを恐れず、自発的にプレゼンしているところが好印象でした。
反面、カンファでは専攻医がプレゼンすることが少ないですが、病棟業務のなかで個々にフィードバックしていました。
また関係部署とのミーティングに関しては、多職種が混ざり「大学」という感じでした。

私としてはサイトビジットを受ける側と行う側を経験しましたが、今までの報告と同様に双方にとってメリットのある機会であることを実感しました。

 横浜南共済病院  2024.4.19


南共済病院の診療体制、カンファレンスの良い点・改善点を下記にまとめさせていただきましたので報告いたします。

<良い点>

初期研修医は不在でありましたが、初期研修医ー専攻医ースタッフといった屋根瓦式の教育体制がカルテ記載を見てもわかるようになっており、
 個人の努力ではなく、システムとして教育を行っていると感じました。
・ERで常に患者を対応しながらも、カンファレンスや勉強会を行えるような役割分担をしており、診療をやりっぱなしではない体制を構築していると感じました。
・カンファレンスも時間内に終了し、当直明けは外でランチが食べれる時間に帰宅しておりました。
・看護師、救急隊とのコミュニケーションの大事にしており、意見交換ノートの設置していました。これはチーム医療を行う上で大変意義があり、かつ導入しやすいと
 考えられるためセンター病院でも検討すべき(救急隊への目安箱は設置しておりますが、看護師用はない)と感じました。
・ER主体の施設であり、トリアージシステム、画像読影システム(24時間以内の読影と医師の読影確認、スマホでの画像共有)などが充実しており、
 非救急医が当直していても質を担保できるように工夫されておりました。

<改善点>

・手技シミュレーションなどのシミュレーターなどがなく、手技のトレーニングが実施できていない
・臨床研究を行うための、環境整備が必要(データベース入力が医師であり補助員等は不在、院内倫理委員会がアクティブでない)
・臨床業務以外の教育・研究を行う際の資金がない

施設長・森先生は今まで教室関連施設以外のERで勤務されており、帰宅時指示書の導入など、各施設でのいい点をうまく組み合わせた体制を作っていられると感じました。
そのため臨床・教育面では充実しており、救急科のパフォーマンス向上により病院収益、研修医の救急科選択率も上がったとのことで、スタッフの士気も上がっているように見受けられ、南共済は勢いがあるなと感じた次第です。
ただ研究に関してが今後の課題とありましたので、大学との連携を今後検討し、教室員であれば、地域のどこで働いても研究ができる体制づくりを目指すべきと思いました。

 横浜市立市民病院  2024.5.14


<症例検討・申し送り>8時30分- 9時30分(救急外来スタッフルーム)

市民病院では救急科スタッフの他に、研修医、救命士もカンファレンスに参加をしています。
カンファレンスの目的を、

・業務の引継ぎ
・教育
・問題点のディスカッション

救急医師・研修医・看護師・研修救急救命士など10-15名が参加し、上級医が司会進行しながら情報共有を行います。
中でも看護師も交えてインシデント報告やその他問題報告を全員で共有しているところが非常に良い点でありました。
横浜市立市民病院はER型でかなりハイボリュームであり、救急・独歩両方ある中で、すべての症例を検討するのが難しいので、気になった症例・教育症例・問題症例を2、3例ずつ共有されていました。
順番は、研修医→専攻医→スタッフというように瓦版式にバイアスが極力かからないよう、またスタッフの症例で専攻医症例の発表機会を潰さないような配慮をされており、非常に段階的に勉強になる討論がなされていました。
研修医・専攻医からの質問などもあり、活発な討論をされていました。
救命士への教育に関するprehospitalの注意点なども教育としてなされていました。
これ以外にも上級医が救急患者全症例の中でもpick upしたものを別時間で症例検討会を毎月企画されているということで非常に教育に対して積極的になされていると感じました。
 

<フィードバック>

カンファレンスに関する上記の評価と、このサイトビジットでの気づきや自施設にも持ち帰りたいことが上記の如く共有し、その点について横浜市立市民病院の救急科としての方針等を伺いました。大方針がしっかり立てられており、それを実践していると思いました。
それ以外に、今回のサイトビジットとは関係なく、普段感じている事を共有しました、
日頃、カンファレンスの司会者がファシリテーターとしての責任も感じ、抱え込んでしまう印象があります。
また司会者と症例提示者以外は黙っていることも多く見かけます。
現実的には、カンファレンスの司会者は全体的な議論の方向性の整理とタイムキーパーの役割でよく、別にファシリテーターをする人間がいても全く問題ありません。
むしろ司会者以外の参加者がうまくファシリテートをしてカンファを盛り上げてくれればと思いますし、その役というのは専攻医の方々でも十分に担えます。積極的にカンファレンスに参加して学んでくださればという話を共有いたしました。

 横浜市済生会南部病院  2024.6.17


<症例検討・申し送り>7時45分- (ICU)

まず7:45のICU回診から始まりました。
本日はICUローテート中の研修医が不在だったこともあり5分ほどで終わりました。
その後救急外来ローテート中の研修医から、前日経験した症例(本日の場合は先週金曜日)から印象深かった症例のプレゼンテーションがありました
それぞれ豊田部長から丁寧なフィードバックがありました。
身体所見から体系的に鑑別診断を挙げることや、時間経過を重視する姿勢が伺えました。
8:30からはICUで各入院主治医とICU担当医のカンファレンスがありましたが、こちらは主治医や看護師間の方針確認や申し送りが主なものでした。その後は救急外来を見学して振り返りとなりましたが10:30から看護師を中心にRRSの回診をしているとのことでした。


自施設の特徴として、NPさんのことを挙げられていましたが、ICUや救急外来、手術室、一般病棟と様々なところで医師と連携することで大きな力を発揮されているとのことでした。
働き方改革を進める上でも、NPさんのみならず、他職種との連携は必須であり、学ぶべき点が多いと感じました。
 
強いて改善点を挙げるとすれば、病院移転直前ということで、施設としてはやはり老朽化しており、狭いところや設備として不十分な点も見受けられました。
豊田先生が研修医の指導に使われていたICU内の小部屋は、6−7人も入るとやや圧迫感もあり、せっかくの内容であるのに、少しもったいない気もいたしました。
現状では仕方のない部分もあり、新病院に期待というところでしょうか

以下総評です。

<良かった点>
南部病院は救急科常勤医こそ少ないものの、救急外来に留まらずICUやRRSにも関わり、幅広く院内のセーフティーネットとして活躍している様が見て取れました
また、人数が少ないからこそ、研修医にマンツーマンに近い密な教育ができていると感じました。だからこそ廣見先生が2年連続でベスト指導医に選ばれたのだと納得しました
救急外来だけでなくICUにも2年目の研修医がほぼ全員選択研修をしているとのことでした。南部病院はER型の施設ですがこのように救急医のスキルを幅広く活かせていることは素晴らしいと思いました。

 

<気になった点>
廣見先生が司令当直明けに急いで戻ってきて日勤に入っていたことや、良い教育でしたがいわゆる前残業になってしまっているところは、働き方の点から今後対応を迫られるかもしれません。
ICUや手術室の部門システムがない点は豊田先生からも課題として挙げられていました。

 横須賀うわまち病院  2024.7.29


この度は、総合診療と救急外来との連携、ICUとの連携についてみさせていただきました。
まずは総合診療内科のカンファレンスに参加させていただきました。
ここでは、週末に入った入院患者の情報共有を担当した研修医がプレゼンし、指導医が質問しながら指導するスタイルで行われました。総合内科の神尾先生や、内科の先生からの指摘、救急科(内倉先生、岸本先生)からの指導を受け救急科のみならず内科からの視点で研修できることが特徴であると思いました。
ERが同時に複数来ており、ER当番であった岸本先生が研修医のスタッフの先生と一緒に診療をマネージメントしているのが印象的でした。
内倉先生からは現在どうやって少人数の救急科が救急外来、総合診療、ICUに携わっているかをお聞きすることができました。

うわまち病院での研修でのメリットとしては、内科の先生と一緒にチームを組んで、入院患者を診ることで内科の視点からの管理や病態把握など一緒に議論ができることだと感じました。
また、ICUでは心血管外科の症例が豊富で、ECMO管理のみならずインペラの管理も学ぶことができます。
総合診療として内倉先生が外来を持っているため、外来での対応や往診医との繋ぎなども学ぶことができます。

当直明けは昼前には帰れる体制は整っており、内科救急医として学ぶことが多い施設であると改めて実感しました。


8時からの外来カンファレンスでは、週末の入院症例について扱いました。
1症例に充てる時間は10〜15分程度。初期研修医によるプレゼンテーションをベースに、指導医による読影の指摘、鑑別や評価についてのフィードバックを行う形式でした。
普段から単調になりがちなカンファレンスをどのようにファシリテートするかはどの施設においても課題となるところだと思います。
 
うわまち病院のカンファレンスは、長過ぎず短か過ぎず、研修医や専攻医が新たな知識を吸収し課題を持ち帰るのに時間・内容ともにちょうど良いと感じました。総合診療科として、内科など他科の医師も一緒に参加するので救急医に偏らない視点で評価できることも新鮮でした。
病棟管理につきましては、総合診療内科で他科の医師との混成チームを形成して診療にあたっていました。
特に重症患者については少人数の救急科が非常に頼りにされており、ER・病棟管理とも救急科が他科との“ハブ”になり重要な役割を担っているのが印象的でした。


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