活動報告

 活動報告  2025.5.25

ATS2025(American Thoracic Society)参加及びWeill Cornel Medical College訪問報告

附属病院小川講師より

<ATS2025, San Francisco>

American Thoracic Society(米国胸部学会)という世界で一番大きな呼吸器学会です。https://conference.thoracic.org/
Abstractは約7000、Speakerは29000人 参加者を合わせると...というような巨大な学会です。

この学会に初めて私が参加したのが2013年 Philadelphiaでありました。
そこから、2014,2016,2017,2018とこれで6回目の参加です。
私には本当に思い入れが深い学会です。初めての国際学会での発表がこの学会でありました。
またJoe Ray Wright Awardという学会賞を受賞したのもこの学会です。
この学会に演題が通るのが呼吸器領域の一つの登竜門というところもあり、今回は2演題が通りました。
 
??なぜ呼吸器?というところかと思いますが、私はもともと胸部外科(心臓血管外科・呼吸器外科)というBackgroundがありまして、大学院も呼吸器系疾患というより肺癌のリンパ節転移に関する基礎研究で取得しています。
初回参加した際の演題は、「COX-2-derived PGE2 forms SDF-1-expressing premetastatic niche via EP3 signaling in mediastinal lymph node with accumulation of immature dendritic cells.」まさにリンパ節転移を防ぐためにはどうしていくかというような内容です。

 

そこから基礎研究が始まったわけですが、今回の発表の内容は、

「Long-Acting Muscarinic Antagonist for Asthma Recovers Mucus Production and Normalizes Cilia Function in Epithelium with Human Airway Basal Cells in vitro ALI Model」
「Long-Acting Beta2-adrenergic Agonist and Inhaled Corticosteroids for Asthma Induced Mucus Production with Human Airway Basal Cells in vitro ALI Model」

喘息吸入治療薬に関する新しい発見を話しました。
おそらく、皆さんは気管支拡張薬(Inhaled Drugs, Bronchodilator)ということで、気管支平滑筋に働きかけて気管支を拡張させるということで、治療ラダーにしても、ICS→ICS+LABA→+LAMA→Tripleという構図があるかと思います。
これはClinical dataから得られた呼吸機能や症候からの治療方針の決定であったような状況です。
しかし、よく考えてみると、気管支拡張薬は直接平滑筋に働きかけるのでしょうか?
平滑筋に届く前に気管支上皮というバリア機能があるでしょう。ここを通過する時に何も作用していないの?というのに疑問を持ち、基礎研究を行っておりました。
 
私はニューヨークWeill Cornell Medical College, Crystal Labに3年半留学しており、そこで気道上皮細胞の特殊細胞系Air Liquid Interface(ALI) modelというものを習得し、それを日本に帰国してから行っておりました。
初めは失敗の連続です。ニューヨークでは、肺がん関連の仕事。帰国してからARDS modelを作成していて、その系の確立に苦労しました。
呼吸器内科の金子教授をはじめ、呼吸器内科の大学院生を教えながら喘息やCOPDの研究をしておりました。
金子教授は粘液産生細胞(Mucus Cell)の権威であり、私は被らないようにとCilia(線毛)に注目しました。喘息の病態は、機動分泌物が増え、それが排出できないということも気管支狭窄と同じくらいの問題になります。
LABA,ICS,LAMAを加えることでどのようになるのかということを研究していました。

セッションが始めると、非常にたくさんの方から質問を受けました。
どんな薬を使っているのか、Inhaled Drugだがlower chamberに加えても大丈夫なのか?clinical dataでは色々とみていたけど、Biological dataとしてこんなわかりやすいdataは見たことがないなどとお話しされました。
みなさん「ポスター発表ってなんかレベルが低いもの」と思われがちですが、一般口演は5-7分に3-5分の質疑応答がついてきて、その後は何もないと言うことが私は好きではなく、国際発表のポスターセッションは2時間くらいポスターの前に立っているとファシリテーターが回ってきて、次々と研究者が回ってきてくれて、いろんな話ができます。名刺交換ももちろんです。なので私は国際学会であれば断然ポスターを選択しています。
今回もたくさん英語でお話しできて本当に楽しい時間を過ごしました。
日本からも多数の施設から学会参加されており、交流を深めました。

 

次回は、Orlandoで開催されます。絶対に行こうと思いまして、現在研究の進行を進めています。


<Weill Cornell Cornell Medical College, New York>

私が2014年から2018年まで留学していたところで、呼吸器関連の基礎研究をさせていただいておりました。

BossのRonald G. Crystalは30代で教授となり、呼吸器内科で世界的に有名な人です。
現在彼のラボに横浜市大4年生のリサーチクラークシップで3年前から学生を派遣しています。今回はそのお礼も兼ねて訪問しました。
久々の再会で緊張していましたが、実際に会うと非常にかっこいい!
全く変わらない姿勢に感動しておりました。

 
 

こちらが学生の受け入れについてお礼をいうと、「いやいや、君の送ってくれる学生はexcellentだから非常に助かっている。彼らは本当に頑張るからぜひ今後も送ってくれ」とおっしゃっておりました。
それから自身の現在の基礎研究の話をし、さらなる研究のアドバイスをいただき、今後も一緒に研究を続けていく算段となりました。
本当にありがたいことです。

ボスと30分ほど話をして、officeの旧友たちと最近のこと、子供たちのこと、日本に行きたいから教えてねなどとお話をしてラボを後にしました。
医学部5年生井野くんと

ラボを離れると、少しずつ寂しさが増してきましたが、私の留学が自分にとって本当に良かったんだなと再認識することができました。

 

現在当教室から山口先生、南先生の2名が教室から海外留学に行っていますが、「憧れだけではいけません。行ってみないとその価値がわかりません。」お金も無くなるし、臨床経験ができないと思うかもしれません。
そんなのは後からなんとでもなります。でも留学の時期を逃すときっと一生行けません。留学はしなくてもいいかもしれません。けど、行けば何かがきっと変わります。
ぜひみなさんには世界への第一歩を勇気を持って進めていってほしいと願っています。留学等に興味がある方はいつでも連絡をいただければと思います。


このように当教室では、国際学会の発表や海外留学に関して、よりGlobalな視点を持てるよう推進しています。
ご興味のある方はぜひご連絡ください。


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