活動報告

 参加報告  2025.6.18

2025年統括DMAT研修に参加しました。


2025年6月16日-117日に立川地域防災センターにて開催されました2025年度統括DMAT研修に当教室スタッフが参加いたしました。
いつ何時起こるかもしれない大規模災害に対して研修に参加し、自己研鑽をしております。


-小川医師より-


令和7年6月16日、17日の両日東京都立川防災センター体育館で統括DMAT訓練が全国各地から124名DMAT隊員参加のもと開催されました。
今回同訓練に参加させていただきましたので報告させていただきます。

 
立川防災センター付近

昨今の自然災害・近い未来に起こると予想されている南海トラフ地震に対する本部での対応などを学びました。
台風・洪水・地震・新型コロナウイルス感染症など様々な事例でどのように対応してきたのかについての講義をはじめ、想定災害が起こった際に自身がDMATとして、本部長としてどのように立ち回っていくか、その進め方は?現状分析から活動方針の決定はどうするか、急性期から慢性期にはどのような方針を立てるべきか、など講義及び机上演習で学びました。
 
講義・演習は16グループで各班8名の構成で進められます。
我々のグループは神奈川県(5名)・石川県(3名)で構成されており、活発な議論が展開されました。
その議論が本当に活発であり、時間が足りないくらい疑問に対して議論を行うことができ、DMAT事務局はその時どのように考えていたのか、どのように考えるか。
本部長はどのように考え、動いているのか。
「完璧な正解がない」災害対応についてその「考え方」を共有することで非常に多く学ことができました。
 
私は2023年10月に日本DMAT隊員となりました。
2024年1月能登半島地震で附属病院からDMATリーダーとして珠洲市へ行きました。
横須賀共済病院土井先生がDMAT本部長の元、副本部長として本部活動をさせていただきました。
本部長土井先生の立ち回りを近くで見させていただき、その考え方、現状分析や活動方針決定などを羨望の眼差しで見させていただきながら、自分がすべきことをしておりました。

 
珠洲市災害拠点本部での光景①

今回の統括DMAT訓練中に、その時の状況が思い出され、「なるほど、あの時に考え方はこういう考え方だったのか」「現状分析・活動方針などもこのようにしてたな」という実働現場での活動の復習ができました。
実際珠洲での活動日記を当時つけており、活動本部全体での現状分析・活動方針、各部隊との連携、DMATとしての現状分析・活動方針など画像つきで残していたものを休憩中に見返すと多くの気づきがありました。
現地での経験と土井先生からの学びが非常に大きいものであると思った次第でありました。
この統括DMAT訓練が修了し、これからは統括DMATとして本部運営なども行なっていく立場として、さらに学ぶべきことがあり、精進していこうと思います。
災害対応のコンセプトを深く学ぶことができた2日間でした。
 
あとは、全国各地のDMAT隊員の皆さん、DMAT本部の皆さんと非常に多く知り合うことができ、いろいろな意見を交わしたり、日常診療についての話や病院運営についてなど本当にたくさんお話ができました。
このような顔の見える関係の構築というのは実災害時にも非常に大切であり、いざという時の心の支えにもなると感じました。
日本DMAT隊員になって以来、DMAT-L研修、DMAT研修、ロジスティックス研修、ブロック訓練、政府訓練などに積極的に参加させていただいており、DMAT関係者の方々と「顔の見える関係」を構築継続中です。実災害の際にはこの関係がきっと役に立つと思いますので。
実際日常診療においても「顔の見える関係」が役に立ったと思えることが外科医時代・大学院時代・アメリカ留学時代・救急医になってからという各フェーズで非常に良かったと思えるフェーズが医師生活24年の中で思えることが多々ありますので、この関係構築は続けていこうと思います。

 
珠洲市災害拠点本部での光景②

今後DMATインストラクターを目指し、修行中です。
いろんな方々との出会いも得られるというところもありますが、何が起こるかわからない災害のコンセプトや様々な考え方をしっかりといろんな方々から学ばせていただき、実災害で堂々と立ち回れるよう、その考え方を皆さんに伝えられるようにしたいと思います。
興味のある方はぜひ各訓練にタスク参加等々し、いろんな関係を作っていっていただければと思います。


ー嶽間澤医師よりー


6月16・17日に東京都立川市で開催された「統括DMAT研修」に参加いたしましたので、内容をご報告いたします。
全国から集まった100名以上のDMAT医師隊員が参加し、災害時の本部運営における戦略的判断・意思決定の基本と応用を学ぶ貴重な2日間でした。
災害時には、以下のように役割が明確に分かれた複数の本部が設置されます。


●都道府県調整本部(戦略レベル)●
→ 資源の全体調整・支援優先順位の決定

各地域の被災状況を俯瞰し、DMATや物資をどこにどれだけ配分すべきかという“戦略”を立てます。希少な医療資源を適切に割り振る司令塔です。
 
●活動拠点本部(戦術レベル)●
→ 地域ブロック内での実動部隊の調整・支援指示

複数の医療機関・避難所をカバーする地域単位の中枢で、現場でのDMAT支援方針の決定やニーズの集約を行います。「このエリアでは診療支援が優先」「この病院の患者を搬送すべき」など、より具体的な対応が求められます。
 
●指揮所(実施レベル)●
→ 現地での状況判断と即応的な行動
被災医療機関や避難所で最前線の判断を行い、患者のトリアージ、搬送の要否判断などを担当します。

統括DMATは、上記のうち「活動拠点本部」や「調整本部」で中核的な役割を担い、以下のような責務を果たします。


情報整理と意思決定支援:災害時は「fog of war(戦場の霧)」の中にあり、正確な情報は極めて限られます 。限られた情報から最適な判断を下し、支援方針を策定します。
ボトルネックの特定と解除:どこに問題があるのかを見極め、動きを止めている要因を解消することが重要です 。
医療資源の効率的な集中と配分:待機中の隊が生まれないように、動的な配置を意識します 。
柔軟な思考と行動の共有:正解が一つでない災害医療の現場では、「こうあるべき」という原則と「こうすべきかもしれない」という応用の両面が必要です。

研修では、地震・台風・COVID-19流行時など多様なケーススタディを通じて、「正解のない災害医療」における“考え方のフレームワーク”を学びました。
特に印象に残ったのは、各フェーズにおける「何を目的にするか」の整理と、その目的達成に必要な資源・指揮系統の組み立てでした。
また、これまでの訓練などでの経験と重ね合わせることで、自分自身の判断と行動を振り返る良い機会にもなりました。
加えて、全国のDMAT隊員との活発な議論・交流により、“顔の見える関係”が構築できたことも大きな成果でした。
統括DMATは「判断する立場」であると同時に「混乱を整理し、動かす立場」です。
実災害時に力を発揮するためには、普段からの知識整理・関係構築・反復訓練が不可欠であることを実感しました。
今後は統括DMAT登録者として、訓練・研修参加を継続していきたいと思います。


当教室には災害時にいつでも活動できるような研修やトレーニングを随時行っており、DMAT隊員も多く在籍しています。
近い将来起こると予想されている南海トラフ地震に対して現場での救護活動を含め、現場リーダーとしてもしっかりと運営できるようにそれぞれの隊員が、日々精進しています。
このような訓練経験を活かして後進に指導していく体制づくりが構築されています。
 
神奈川県でもいつまた災害が発災するかわかりません。「その時」に動ける人材育成も我々横浜市大救急医学教室の使命の一つです。このような大規模実働訓練の反省を生かしてよりより体制整備に尽力してまいります。
 重症患者の治療に加えて「災害医療」に興味がある若手医師の皆様、お気軽に横浜市大救急医学教室までお問い合わせください。

20210224_134337.jpg img_0571.jpg img_3275.jpg img20240407075318696970.jpg img20240407080112841200.png img20240407093241076210.png img20240407093614933686.png img20240407093614927246.png img_9084.jpg